こんにちは。コミュマネラボスタッフのゆりなです。

もっとメンバーさんのことを知りたい!という思いから始まったインタビュー企画。第3弾は「ありぱん」こと高尾有沙さんです。複数人のコミュマネによるコミュニティ運営方法やオンボーディング、トラブルシューティングについてお聞きしました。

■ ありぱんさん運営コミュニティ基本情報

情報収集(インプット)と情報発信(アウトプット)について、ナレッジをシェアしあうオンラインサロン IN / OUT LAB(インアウトラボ)

2021年3月からメンバーとして参加し、2021年末から運営スタッフを務めている。 インプット・アウトプットが促進され、お互いを受容している状態を70名程のメンバーと目指している。

💡 <コミュマネ一問一答>

理想的なコミュニティ像

楽しみ方が多様に許容されているコミュニティ

コミュマネになって一番苦労したこと

トラブルシューティング

オンボーディングはどうしてる?

1対1で丁寧にコミュニティの仕組みやメンバー、おすすめのコミュニティ活用方法を紹介

目標

オンラインの居場所論を学術的に捉えること

社会学おすすめ本

断片的なものの社会学」「国道16号線: 「日本」を創った道」「新宿二丁目の文化人類学: ゲイ・コミュニティから都市をまなざす

好きなアイドル(余談)

=LOVE・≒JOY

好きなキャラクター(超余談)

シナモロール・あひるのペックル

詳細インタビュー 👀

- 複数のコミュニティを運営されているとお聞きしていますが、詳しく教えていただけますか。

現在、メインで関わっているのは西村創一朗さんが主宰するインプットとアウトプットを加速させるコミュニティ「IN / OUT LAB」ですね。あとは、富山県主催のアクセラレーションプログラム「とやまスタートアッププログラム」、富山県のスタートアップに関わる方のコミュニティ「とやまスタートアップコミュニティ」、興味のある本を30分で読んで30分ディスカッションする「Pairdoku(ペアドク)」などに携わっています。

また、昨年末まで朝活コミュニティ「朝渋」の運営にも参加していました。それ以外にも自社の勉強会コミュニティの運営も行っており、マーケティングや広報について定期的に学ぶイベントを実施していました。

-さまざまなコミュニティに関わっているんですね。コミュマネはいつからやっていらっしゃるのですか?

朝渋の運営に関わり始めた2020年5月頃からです。2年半程スタッフとして活動していました。

最初はメンバーのひとりだったのですが、私自身が役割が与えられていない状態での立ち振る舞いが得意ではなくて、いろいろとこなしているうちにスタッフにならないかと打診されてお受けしました。

-学生時代から学級委員長などの役割を引き受けることは多かったんですか。

そう言われてみると中学・高校時代には生徒会長をやっていましたね。社会に出てから身の周りに生徒会に入っていた人がいっぱいいると気づいたときがあって、自分が所属してる社会はそういう人のいやすいところなのかなって思っています。

問題を放っておけない人や世話好きな人と仲良くなることが多いので、そうなのかもしれません。

-そうなんですね。IN / OUT LABのスタッフは何人いらっしゃるんですか。

5人ですね。私の担当はオンボーディングとチームの振り分け、チャンネル設計やメンテナンス、部活動の管理などです。

-運営スタッフを増やしたいという話をよく耳にするのですが、どういう流れで今の人数になったんでしょうか。

最初からコミュニティオーナーと一緒にやっていた方が1人いて、その後に入ったのが私、外部から招集した1人、人手が足りなくてコミュニティの中心メンバーだった2人に依頼してジョインしていただき、今の状態になりました。そのため現在は、コミュニティオーナーを抜いて5人です。

ー 多いですね!意思共有はどうされているのでしょうか。

意思共有は、毎週火曜日の朝7時から7時半に定例会をやっています。今週やったこと、問題になっていることなどを共有して、あとは中規模から大規模なテーマを少しずつ話し合っています。例えば、コミュニティのルールや運営スタッフのミッション整理、今後のコミュニティのあり方や新規企画などについてですね。

ー 工夫されていますね。複数人でやってるがゆえの困りごとなどはあるんでしょうか。

困っていることはまさにそこに起因していて、スタッフは金銭的報酬は無く、その代わり参加費を無料にしてもらうことを条件に働いているので、正直金銭的報酬で考えると働かなくても良いというか、働かないほうが得なんですよね。

また、それぞれの忙しさの度合いやコミットメントなどにも差があります。そうすると、どうしても貢献度にムラができて、発言の頻度、ひいては発言権の大きさもそこに比例してしまう気がしています。 主観的報酬である新鮮さはどうしても減退していってしまうので「主観的報酬ではなく客観的報酬をどう設計するか」が大事だと思っています。

金銭的報酬の部分については、現在進行形で主観的報酬も含めた報酬設計を運営みんなで検討中です。

ー なるほど。他にはありますか。

また、これは特定のコミュニティに限ったことではないのですが、運営スタッフの辞め方が難しいと感じています。

円満に辞めた場合は良いのですが、マイナスの感情を持って辞めたときに、もしそのことがメンバーに伝わってしまうと、結果としてコミュニティのレピュテーションが落ちるので、辞め方の設計は考えないといけないと思っています。

-ポジションを持ってる人が辞めるときの会社と近いですね。メンバーの卒業に比べてスタッフの卒業は視点から漏れがちなので揉めやすいし、よりコミットしてくれた人だからこそ上手くいかないことはありそうですね。

そうですね。以前、あるコミュニティでは運営を期限つきで任命していく形式にして、一番その時活性度の高いメンバーにお願いする、という方法を取っていたのですが、そうすると運営をやめる際にネガティブな意見が出た際に周囲に対して影響力が強かったり、月日が経過するとなかなか任命するメンバーが見つからなかったりして、あまりうまくいきませんでした。うまくやっているコミュニティの事例は知りたいですね…

ー 担当されているオンボーディングはどのようにやられてるんですか。

入会してくださったら、ZOOMで1人あたり30分ほど1対1でお話していて、まず、コミュニティに入ったきっかけと簡単な自己紹介をお話してもらいます。

あとは、Slack上のコミュニティなのでSlack慣れしているかどうかをお聞きしています。実際の画面を見せながら質疑応答することでわかりやすいのでよかったと思います。

また、インプットとアウトプットを促進していくことを目的としたコミュニティなので、「具体的にどんなインプットが欲しいか」や「どのような手段で、どんなアウトプットをしたいのか」と問いかけ、短期的な目標設定をしています。

-うまくオンボーディングできなくて活動がアクティブにならないということは起こりがちなのかなと思うのですが、そのあたりで工夫されていることがあれば教えてください。

当コミュニティでも以前は入会からの定着率が課題になっていました。原因を探っていくと、「Slackの使い方やコミュニティの使い方がそもそもわからない」という機能的な部分だけでなく、「コミュニティに仲良くなれそうな人がいるかがわからない」というコミュニケーション的な部分についても、フォローアップが必要であることがわかりました。

そこで、現在は最初のオンボーディングに時間をかけて、コミュニティの使い方、楽しみ方を丁寧に伝えるようにしています。

特によかったと思っているのは実際の活動を見せたり、人を紹介したりしたことですね。

勉強会や月例会、日々のチェックイン・チェックアウト、部活など色々な活動があるので、それぞれを画面共有しながら実際に見てもらって、やりたいかやりたくないかを確認して、 前向きであればその場で参加していただいています。 

また、自己紹介からわかったその人の興味関心を踏まえて、気の合いそうな人、環境の似ている人などを紹介し、コミュニケーションを取れるよう、メンションをするなど会話のきっかけを作っています。 

コミュニティはチャンネルという器はあるけれど、やはりベースは人だと思っているので、なるべく多くの人を紹介することが大事だと思っています。 その人に「この人にだったら悩みを相談できそうだな」とか「この人と仲良くなりたいな」という内発的動機を持ってもらえるように意識して行っています。

今まではオンボーディング後に半数以上がROM専になってしまっていましたが、直近では入会した8割近い人がアクティブに活動してくれているので、かなり改善できているのではないかなと思っています。

-8割はすごいですね。オンボーディングをしたあとはどのように働きかけていくんですか。

基本的にはチームに入っていただくので、振り分けたチームのリーダーとサブリーダー、チームの運営担当に紹介して、そのあとはそちらに任せています。部活でも同様ですね。

-チームのリーダーはメンバーさんなんですね。何チームぐらいあるんですか。

特に皆さんへ働きかけてくれるメンバーをチームリーダーにしています。4チームあって、それぞれメンバーは10人ぐらいです。そのうちチェックイン・チェックアウトに参加する人は半分ぐらいですね。

-チェックイン・チェックアウトってなんですか。

「昨日の振り返り」と「今日やるインプット」と「今日のアウトプット」を毎日宣言してもらっています。

みんなで毎日やることによって小さなアウトプットを習慣づけることを目指していて、できれば入会してすぐの方には全員に参加していただきたいと思っています。ジャーナリングを兼ねていますね。

-みんなでやると三日坊主にならずに習慣として身に付きそうですね。いろいろなチャンネルで雑談もしながら、皆さんで高めあっていくコミュニティなんですね。

そうですね。例えば、もくもく会は朝6時からのものと、夜21時ごろのものとあります。なんとなく集まって、それぞれが作業をするチャンネルなのですが、その会のいい意味での「ゆるさ」が好評です。 あとは、オフラインとオンラインでランチ会、また、月例会、勉強会をそれぞれ月に1回やっています。月例会では今月コミュニティであったことを話したり、アウトプットの中で1番よかったものを表彰したりしています。

-勉強会ではどんな分野を勉強されるんですか。

インプットとアウトプットに関することは全般的に何でもですね。講師を招いて、自己啓発系や読書術、ストレングスファインダーの読み取り方など多岐に渡ります。

-勉強になりそうですね。コミュニティ運営をされていて、失敗談や特に苦労されたことはありますか。

以前、別のコミュニティでのお話ですが、失敗したのは声の大きなメンバーにコミュニティのイベントの企画などを任せすぎてしまったことですね。結果として、その人がほかのメンバーを引き連れて同じようなコミュニティを作ってしまいました。客観的報酬をお支払いできる会社と違って、生々しい欲求を止めるすべがないので、非常に人間的になると感じました。

また、コミュニティ運営に関わっている方何人かと話をすると、共通で把握している要注意人物のような方が何人かいて、そういう人がコミュニティジプシーをしているということがわかってきました。

実は、別のコミュニティで問題を起こした人が過去に私の運営コミュニティに入ってきたことがあって…。 そのときに他のコミュニティを運営している何名かの方から注意喚起の連絡をもらって、注視していたら、やはり問題行動を起こして、速やかに退会してもらったということがありました。

なので、そのときのように、特にトラブルシューティングに関わる情報は、(個人情報に触れない範囲であれば)あらかじめシェアしておくことで自衛しやすくなるので、情報をシェアできる仕組みを作れたらいいよねなんて話をしています。

-コミュニティ内部ではどうやって対処や注意喚起しているのですか。

ネズミ講の誘いや付きまといのような犯罪がちらっと見えそうな類は強制退会にしています。一度コミュニティ内で私自身が他のコミュニティメンバーにつきまとわれる事件がありました。複数のコミュニティでご一緒しており、あるコミュニティではオーナーからの警告や話し合いの上、納得して辞めてもらえましたが、もう1つのコミュニティではルール設計が甘かったことから納得してもらえず、コミュニティオーナーの会社に連日何本も電話がかかってきてしまい、とても大変でした。自分がそういう体験をしているので、トラブルをきっかけとして最悪の事態が起きないように万全を期すことを意識しています。

また、スタッフとメンバーにそこまで仕切りがあると思っていないので、過度に神格化されたり、壁を感じられたりしないように、積極的にポンコツ感を出すというか、身近に感じてもらえるようにすることで、裏で起こったことや困りごとなどの情報を取りに行ける場所にいたいとは思っています。

というのも、コミュニティ内で問題行動が起きると、それがたとえどんなに小さなものだったとしても、全体のアクティブ率が下がることが多いんですよね。主要なメンバーの退会リスクにもつながるので、トラブルには敏感であるに越したことがないと思っています。

また、メンバーのメンタルコンディションは気を付けて見ています。「最近調子よさそうだなぁ」とか「あまり元気なさそうだなぁ」とか、表情や声色だけでなく、「アクティブ率が下がってるのではないか?」などを観察して、トラブルを未然に防げればと思っています。

-情報を取り行ける場所にいることで事態が大きくなる前に収拾することができるのですね。トラブルに立ち向かうとストレスを感じる瞬間がどうしてもあるのかなと思うのですが、対処法が気になりました。

仕事をしていると愚痴を言ってはいけない相手が誰にでもいるとは思うんですけど、私は事情を知っている別のコミュニティの友達にぼやかして相談しています。

とはいえ、嫌な気持ちになったときにどこまで開示するのかって難しいと思っていて、私はその場にいる人に見せてはいけないとあまり思っていないんですよね。その中に同じように思う方が多少いるはずなので、 婉曲的にマイルドに伝えるようにしています。逆に、思ったことを全く言わないのはあまりヘルシーではないと思っています。

-その場で伝えることで同じように思っている方の溜飲が下がりそうですね。大事にされてることはありますか。

大事にしてることは「立場の段差を作らないこと」ですね。自分の特性かもしれないですが、マジョリティが楽しんでいたとしても、それによって仲間外れとか、嫌な気持ちや気まずい思いを持っている人がいないかを見るようにしています。

マジョリティが楽しければそれでいい気もするんですけど、自分が常にマジョリティだったわけではないし、全員が同じものを楽しめるということはあり得ないと思うので、楽しめない人に抜け道を作ってあげるとか、別の楽しみ方ができるように工夫するとかは気を付けなきゃいけないと思っています。

「ここは自分の居場所ではない」と思われてしまうと、あっという間にその人の心は離れてしまうので、どんな立場や関わり方であっても「自分の居場所だ」と思ってもらえるようにするのが大事だと思っています。

ー運営する上で意識されていることはありますか。

今のコミュニティですごく意識してるのは努めて応援的であることです。自分自身なるべく多くの人に対して応援的でありたいと思っていますし、メンバーにもその姿勢を求めています。

「インプットとアウトプットを促進する」コミュニティなのですが、そもそもアウトプットというのはすごく勇気がいる行為です。なので、互いに応援的であることが、とても重要だと思っています。

-多様な楽しみ方ができるコミュニティは素敵ですね。優しいことや耳当たりの良いことばかり言うのは応援でもないのかなと思うんですが、どこまで厳しいことを言うのか線引きが難しそうです。

仕事じゃないので、正直あまり厳しいことは言わなくていいのかなと思いますね。

でも、思ったことは言います。例えば、アウトプットのなかで誤字や文章の構成の順番など気づいたことがあれば伝えますが、前提として「もっと良くなってほしい」と思っているからで、自分の考えつく限りマイルドに伝えているつもりです。

また、相手のコンテクストを想像して、コミュニケーションするようにしています。どれぐらい端的に言っていいのか?口語がいいのか?箇条書きが伝わりやすいのか?などは考慮しています。

-ありぱんさんは本業に加えて複数のコミュニティを運営されていてお忙しくされているかと思うんですが、脳の切り替えや時間の使い方はどのようにされていますか。時間帯でわけているのか、流れるようにやっていくのかなど教えてほしいです。

本業では、広報、マーケティング、組織開発をやっています。

私は脳が多動なタイプで、やったそばから全て忘れていくタイプなので、見かけた瞬間にやるように心がけています。メンバーから「即レスしてくれて嬉しい」と感謝されることもあるんですが、常にPCの前に座っているし、その場で処理しないと永遠に忘れ去られてしまうので、この動き方自体は行動や思考の特性にフィットしているのかなと思います。

また、コミュニティマネジメントはマーケティングや人事、組織開発系の側面など多様な要素があり、総合格闘技に近いなと思っています。私は若干ジョブホッピング気味で、2年ぐらいで転職かつ職種も変えていて、1つに集中できないことが以前はコンプレックスで弱みに思っていましたが、今はいろいろと経験してきたことが強みになっていますね。

モノの見え方が変わったし、自分自身の動きにしっくりくる職種だと感じています。

-いろいろなお話を聞けて面白かったです。最後に、今後やっていきたいことなどがあれば教えてください。

「コミュニティにおける実践の体系化」です。既存の居場所論やコミュニティに関する学術論文は、例えば地方創生などのようにリアルな場を伴うものが多いと感じています。オンラインで居場所を作っていくことは学術的にはすごく最先端なはずなのに、今も学術的な居場所の営みの実践は、サードプレイスなどのリアルな場を伴うものに終始してしまっていると思っています。

なので、オンラインでの先行事例をきちんと作って体系化していくという学術的な活動をゆくゆくはできたらいいなと思っています。

そういう観点でコミュニティを眺めてる人はあまり多くない気がしているのですが、コミュマネラボには同じような方がいると思うので、そういう話を皆さんとできれば嬉しいです。

-居場所論はぜひお話したいですね。現象としてコミュニティを捉えている人も、構造的な話が好きな人も、コミュマネラボにいるので、今度そういう会をやりましょう。ありがとうございました!